アンセム・フォー・ラムズ

Anthem for Lambs


 連邦捜査局シドニー支局、異常犯罪捜査ユニットのチーフを務めるニール・クーパー特別捜査官。
 アレクサンドラ・コールドウェルとの切るに切れない腐れ縁に悩まされる彼は、同時に嫉妬深い妻シンシアの譫妄にも頭を抱えていた。
 そんなある日、コールドウェルはシドニー支局に厄介な大仕事を持ち掛ける。
「連邦捜査局じゃねぇと、どうにもできねぇ案件だよ」
 舌打ちと共にコールドウェルは、ニールに事件のファイルを渡す。ファイルには、連邦共和国を揺るがしかねない大ニュースが書かれていた。
「……遂に死んだんだ、あの人が」
 潰えた天才と、彼が遺した負の遺産。
 野望と陰謀、正義と偽善が渦巻く空中要塞の中で、己の信じる正義を執行する死神と捜査官の物語。

目次

One can't put back the silver wheel

Life is what you make it

Better late than never

Faith will move aeropolis

Just forget it

A friend in need is a friend indeed

Innocence is bliss, wisdom is anguish

Prevention is better than cure

The fake is mightier than the fact

There is no royal road to everything

After a storm comes a storm

What will be, will be

* * *

Into the twilight

Song of dusk

I rise in the dawn

Check the answer

Epilogue

登場人物紹介(抜粋)

ニール・クーパー
主人公、連邦捜査局特別捜査官。四十四歳。異常犯罪捜査ユニットを率いるユニットチーフ。旧姓はアーチャー。
そして末恐ろしい妻シンシアの尻に敷かれる情けない夫であり、一人娘であるスカイにデレデレのパパでもある。
アレクサンドラ・コールドウェルとは最近、ようやく対等な立場になれた模様。
アレクサンドラ・“アレックス”・コールドウェル
主人公、ニールの元相棒、特務機関WACE隊員で執行担当。四十四歳。過去の記録はすべて抹消されている。
敵意を見せた容疑者を容赦なく射殺することから、連邦捜査局では「死神」とあだ名されていたが、最近はそう呼ばれることも少なくなりつつある。
なおASIでは「猛獣」と呼ばれているとのこと。
本名はアレクサンダー・コルト。父親は元探偵のダグラス・コルトである。
バーンハード・“バーニー”・ヴィンソン
連邦捜査局に出向中の検視官。年齢は不詳、かなりのベテランである。
彼の表情筋は、いついかなる時でも微動だにしないが、声色だけはめくるめく変化することで有名。
言動や所作が女性よりも女性らしいと評判だが、それには悲しくも情けない裏話があるとか、ないとか。
リリー・“リル”・フォスター
連邦捜査局、現シドニー支局長。淑女の年齢に触れてはならない。
よく言えば生真面目、悪く言えば堅物で神経質な人物。ゆえにガサツなコールドウェルとは何かとそりが合わない。
元検察官であり、そして以前は内務調査部に所属していたということもあり、捜査官たちからは恐れられている。
ハリエット・ダヴェンポート
連邦捜査局に出向中の検視官助手。二十八歳、検視官昇格試験に合格する為に猛勉強中。
アスペルガー症候群を自称しており、実際に彼女の言動にはその特徴が如実に表れている。
良くも悪くも素直で、何でも額面通りに受け取るために、連邦捜査局ではよくからかわれている。つけられた仇名は「解剖室のクリーチャー」。
エドガルド・“エディ”・ベッツィーニ
ニールの部下の一人、連邦捜査局の特別捜査官。二十六歳。異常犯罪捜査ユニット所属。
アバロセレン技師を目指していたが、ワケあって諦め、連邦捜査局に目標を転換したという過去を持つ。
お調子者で、一言が多い。ダヴェンポートに「解剖室のクリーチャー」という仇名を付けたのは、彼である。
エイミー・バスカヴィル / “レムナント” ジュディス・ミルズ
シドニー市警鑑識課にて、主任を務める科学捜査官。四十六歳。仕事一筋の仕事人間。
……というのは、エイミー・バスカヴィルとしての顔である。
彼女の正体は市警に潜入中のASI工作員、コードネーム「レムナント」ことジュディス・ミルズ。
コールドウェルの良き友人であり、飲み仲間であり、夕飯の奢り要員である。
“アルファ” ヒューゴ・ナイトレイ
ASI本部、アバロセレン犯罪対策部特殊作戦班、班長。三十八歳。かつては空軍特殊部隊に所属していた元士官。
防弾チョッキを着ている時の彼は仕事に真面目なまさにプロだが、私生活に入ると一転。自堕落さに定評がある。
コードネーム「アルファ」でない時の彼の目は、女性ばかりを追っているとか、なんとか。
イザベル・“ベリー”・クランツ
アルフレッド工学研究所の所長を務めるアバロセレン技師。三十二歳。
異能の力を持つ、覚醒者のひとり。そして世紀の天才に直々に認められた、彼の後継者である。
華奢な女性のように見えて、豪胆でワイルド。一部では、将来の高位技師官僚候補とも噂されているらしい。
アストレア/ アイーダ・S・フランツマン
特務機関WACEの隊員、執行担当。二十六歳。
立派な成人女性になったはずが、その容姿は相変わらずASIの某局員にそっくりで、十歳男児のようだと揶揄されている。
そしてコールドウェルに育て上げられたせいか、どうにも血の気が多くなってしまったようだ。
ラドウィグ/ ルートヴィッヒ・ブルーメ など
特務機関WACEの見習い隊員。二十五歳。ギョロッと大きな猫目が印象に残る青年。やせの大食いで、且つ筋トレが趣味。
複雑怪奇な生い立ち故に、いくつかの名前を持っているが、WACEに来てからは姓なしの名前「ラドウィグ」で落ち着いた模様。
元はアルフレッド研究所に勤めるアバロセレン技師であったが、色々とあってWACEに拉致されたという経歴を持つ。
“レイ” Artificial Intelligence: Let
表舞台における彼女(?)は、レイ・シモンズという名前のスーパーモデル。
しかしその正体は特務機関WACEにて、散々にこき使われているアンドロイド。あらゆる雑務を担当している。
頭部に搭載された人工知能のブラックボックス製作者は、かの大天才ペルモンド・バルロッツィ。
しかしアンドロイドとしてのボディは元老院が作ったとかで、ボディに関してはなにやら不満がある模様。
サー・アーサー/ シスルウッド・A・マッキントシュ
特務機関WACEを取り仕切る男。瞬間移動という人間離れした技を見せたりと、謎が多い。
バルロッツィ高位技師官僚よりも心無いサイコパス、とアイリーンは彼を評価している。
そして正真正銘の死神である。
マダム・モーガン/ ファーティマ・ダルウィーシュ
特務機関WACEの真のボス。二二〇〇年近い時間を生きるおばあちゃん、と自称している。
フレンドリーで優しいひとだけど彼女は誰よりも怖い、とアイリーンは彼女を評価している。
そして正真正銘の死神である。
ペルモンド・“ペイル”・バルロッツィ
軍事防衛部門の元高位技師官僚。年齢は八十七歳ともいえるし、マダム・モーガン同等ともいえる。
数々の不死身伝説を誇り、サイボーグやら人造人間やらと言われた男にも、どうやら終わりが訪れたらしい。
しかし、彼の創り出した罪が消えたわけではない。
“曙の女王” ダイアナ
曙の女王や、ダイアナと自称する謎の女。情報によれば年齢は四十三歳のようだが、少なくとも容姿は二十代の若い女性である。
ある日突然アルストグランに現れた彼女は、ある事件を各地で起こして回る。しかし彼女の意図や目的は不明。
どうやらコールドウェルとニールの二人との間に、何かしらの因縁がある模様。
“ジョン・ドー”
訳ありで検視官バーニーの家に転がり込んできた青年。年齢、本名、共に不詳。
自身の過去に関する記憶が一切なく、そして視力もないらしい。
またてんかん発作を持っているとかで、検視官バーニーも彼を追い出したくても追い出せない模様。
スカイ・クーパー
ニールとシンシアの一人娘。華の女子高生で、年齢は十七歳。
能天気であり、だいたいお腹を空かせているという性格は、若いころの父親にそっくりだとか、なんとか。
成績も無論、若いころの父親に似ていてあまり良くない。
“ルーカン” アイリーン・フィールド
特務機関WACEの隊員、テクニカルサポート担当。
ビビッドな色合いをした奇抜な洋服に身を包み、ハイテクを操る才女。
そして彼女の容姿は二十歳そこらにしか見えないが、実年齢はその四倍だという噂が。
ダグラス・コルト
アレクサンドラ・コールドウェルこと、アレクサンダー・コルトの父親。七十九歳。
元刑事で、元探偵で、今は旧シドニー港跡地をねぐらにするホームレス。
そして此度の事件において、遺体の第一発見者である。