EQPのセオリー

07

「アレックス?! 大丈夫か、おい!!」
 そんな誰かの大声が、聞こえたような気がした。
「アレックスちゃんは、大丈夫なんですよね?!」
「まずは落ち着いて、それから質問に答えて下さい」
「質問?」
「彼女の名前、年齢、住所を教えて下さい」
「ああ、はい、えっと……。彼女は、アレクサンダーです。アレクサンダー・コルト。うちの園のアルバイトで、年齢はたしか十八だったかなぁ……? それで住所は、えっと、あの……――」
 続いて、バイト先の先輩の声も聞こえてくる。だがその声をかき消すように、救急車がけたたましいイエルプサイレンを鳴らした。救急車の中から引き摺り出されたストレッチャーはガタガタと音を立て、医療人と思われる人々の騒がしいやり取りも聞こえてくる。野次馬の喧騒も聞こえていた。
 あたりは静けさとは程遠く、深夜の動物園とは思えない状況になっていた。
「アレックス!!」
「おい、何をぼうっと突っ立ているんだ! 野次馬を引き離せ!」
「ただの野次馬じゃない!! 俺はニール・アーチャー、そいつの、アレクサンダーの友人だ!」
「友人だって?」
「ああ、そうだ!」
 がたがたっ、という衝撃が冷えた体の芯に響く。そしてアレクサンダーは薄っすらと瞼を開け、小さな声で口ごもるように呟いた。
「……ニー……ル……?」
 アレクサンダーは今、ストレッチャーの上に仰向けの体勢で乗せられていた。ぼやけて見える視界には酸素マスクやバイタルを計る機械ばかりが見え、そこが救急車の中であることを理解させた。
 そういや、どうしてこうなったんだっけか。アレクサンダーは救急車に乗せられることになるまでの経緯を思い出そうとするが、どうにも記憶が途切れていて思い出せそうにない。
 先輩と共に、ウィキッドを寝床に戻そうとしたところまでは覚えている。だが、その先がどうにも……――分からない。
「そいつの名前はアレクサンダー・コルト、八月十三日生まれの年齢は十七。家はアルストグラン連邦共和国首都特別地域、キャンベラ市グレビリア区、エヴァーラスティングストリート三番地、五号室。コルト探偵事務所だ」
「そうか、助かったよ。なら君は」
「俺はそいつの親父さんの連絡先も知ってる。それに、そこの飼育員よりアレクサンダーのことを知っているし、あのライオンが撃たれてアレクサンダーが下敷きになるところを遠巻きから見てた。状況は一通り把握してるし、役に立つはずだ。だから俺も乗せてくれ」
 アレクサンダーは少しだけ首を起き上がらせ、救急車の外の景色を窺い見る。アレクサンダーの傍には無線で誰かと連絡を取っている救急隊員らしき女性が一人だけ居て、それで外には同じく救急隊員であろう男性二人が野次馬の相手をしていた。その野次馬の中には飼育員の先輩も居て、それにどういうわけか友人であるニール・アーチャーの姿も見える。
 これは一体、どういう状況なんだ。
 アレクサンダーは必死に考えようとするが、その思考をズキンという痛みが邪魔をした。体中が、玉つき事故に遭った後のように痛むのだ。それに頭が、あと左頬が痛む。特に左頬に関しては、大きな金属片で斬り付けられたような、焼けるように痛む感覚があった。
「キャンベラ国立大学病院が受け入れてくれるそうです、今からそこに向かいます」
 無線から耳を離した女性隊員が、外で野次馬の対応に追われている隊員に対してそう言う。
 キャンベラ国立大学病院。そこは奇しくも、ユンが入院している病院だった。
「ああ、分かった。――仕方ない、君も乗ってくれ」
 外に居た男性隊員のひとりが、ニールに対してそう言う。そして救急隊員二人とニールの合わせて三人が乗り込むと、救急車はエンジンを吹かせた。
 がたっ、がたっ。ストレッチャーは激しく揺れ、アレクサンダーの体もがたがたと揺れ動く。ただでさえ痛む体に、更なる激痛が走った。そして痛みに耐えかねたアレクサンダーは、小さな呻き声をあげる。すると女性の救急隊員が、投げ出されていたアレクサンダーの右手をそっと握った。
「大丈夫ですか、アレクサンダーさん。ここがどこだか、分かりますか?」
「……救急車、ですよね……ッ!」
 一際大きく車体が揺れ、ストレッチャーも動く。体に再び鋭い痛みが襲いかかり、アレクサンダーは表情を歪ませた。
 そんな時に、一瞬だけ見えたニールの表情。アレクサンダーをじっと見つめるニールの目は、とても冷え切っていた。





「良かったな、軽症で済んで。親父さんも、もうすぐ病院に着くってよ」
 処置が終わり、病室に移されたアレクサンダーに対し、ニールはそう声を掛ける。けれどもその口調はどこか皮肉めいていて、突き放すような冷たさがあった。それに顔は、にこりともしていない。
 彼は、いつものニール・アーチャーではなかった。それはどんなに鈍感なバカでも分かることだった。
「あぁな。本当に良かったよ。引っかき傷と打撲、脳震盪ぐらいで済んでさ」
 アレクサンダーはそんな彼の変化に気付かぬ振りをしながら、いつもの調子で軽く笑う。一体全体どうしてああなったのか、わけが分からないよ。そんなことを、呟きながら。
「……なぁ」
「ん?」
「すっとぼけるなよ、アレックス」
 ニールはそう言うと、アレクサンダーを睨みつける。その鋭い目つきは、アレクサンダーが初めて見るものだった。
「銃弾は二十二口径、ロングライフル弾だった。この意味が、分かるか」
「……いや」
「相手は明らかに、お前を殺しに掛かってるんだよ。だがお前は、幸運の女神に愛されてるらしいな。運よく、あのホワイトライオンがお前の盾になり、代わりに被弾した」
「ウィキッドが?」
「ああそうだよ、あのライオンがお前を守ってくれたんだ。まあ、その代償といっちゃぁなんだが、左のほっぺに爪痕を残されちまったみたいだがな」
 へっ、とニールは鼻で笑う。だがその顔は笑っていない。目つきは変わらず、鋭いままだった。すると、冷たい目をしたニールは言う。「……俺は知ってるんだよ、アレックス。お前が、何をやってるのかを」
「知ってるって、何をだよ」
「お前が何の情報を探しているかだよ」
 その瞬間、底知れない恐怖がアレクサンダーの心を満たした。しかしニールは気味の悪い言葉を続けた。
「お前があの人の連絡先を知っていることも、分かってる。そして、怖気づいてまだその番号に掛けていないことも知ってる」
「待ってくれよ、ニール。それはどういうこっ……――」
「……ペルモンド・バルロッツィ高位技師官僚」
 今、自分の目の前にいる男は、本当にニール・アーチャーなのか? そんな疑念が、アレクサンダーの頭の中を過ぎる。いや、もしかするとこいつは、ニールのマスクをかぶっただけの奴なのかもしれない。そんな、荒唐無稽な希望的観測も同時に頭を過ぎった。
 けれども希望は、すぐに絶望で打ち消される。ニールは申し訳なさそうな表情を浮かべて、アレクサンダーから視線を逸らす。そして、消え入りそうな声で告白した。
「先に謝らせてくれ、アレックス。俺は高校に入ってからずっと、お前に隠しごとをしてた」
「……」
「俺、ASIの局員に頼まれてたんだ。お前の監視をしろって」
「アタシの監視だって? ちょっと待て、どういうことだ」
「お前の親父さんはペルモンド・バルロッツィを知ってる。だから」
 ASIこと、アルストグラン秘密情報局。諜報活動を主に行う、アルストグランの情報局だ。スパイ映画の題材にもよく扱われる、あのASI。ニールは自分が、そこの局員に頼まれてアレクサンダーを監視していたと告げたのだ。それもアレクサンダーを、アレクサンダーの父を監視していたと。「何を言ってるんだよ、ニール」
「――お前が殺されるかもしれないから、行動を注視しておけって言われたんだよ。そして今日、それが現実になりかけた」
「ニール、やめてくれ」
「アレクサンダー! 頼むから、俺の言うことを聞いてくれ!!」
 そのときニールは初めて声を荒らげた。そののち彼は床にへなへなと座り込むと、地面に手を付き、顔を俯かせる。そして震える声で、静かに言った。
「……俺は、お前を死なせたくはないんだ。お前だけは、絶対に。だってお前は、俺の……――!」
 どこか底冷えする夜。カーテンが開け広げられた病室の中を、物悲しげな上弦の月が照らす。月が放つ青白い光は、青ざめたニールの顔を暗闇から浮かび上がらせていた。





 ライオンという大きな肉食獣の爪で引っ掻かれたせいなのだろうか。最低でも二日は様子見のために入院してくださいと医者に言われたアレクサンダーは、短い入院生活を余儀なくされた。
 そして迎えた病院での初めての朝。病室に居ても昨晩のことを思い出してしまうからと抜け出したアレクサンダーは、誰も居ない談話室に来ていた。
 その談話室はとても日当たりが良いのだが、それ以外には特に良い所は何もない。精々あるのは、何の役に立つのかも分からないおしゃべりAIロボットだけである。
 そんなこんな、特にやることもないアレクサンダーが日向ぼっこをしていると、電動の車椅子が近付いてくる音がする。振り返ってみると後ろには、車椅子に座ったユンが佇んでいた。
「アレクサンダーも、ここに……?」
 頭を包帯でぐるぐると巻かれたアレクサンダーを、ユンは不思議そうに見つめる。アレクサンダーは苦笑した。
「ああ。バイト先の動物園でホワイトライオンの下敷きになってさ、このザマってわけ」
「動物園で働いてるの?」
「まあな。……つっても園内のゴミ拾いとか、売店のレジ打ちとか、それぐらいしかしてないけど。動物に近付くことはないんだ。正規の職員じゃないからね」
「じゃあなんで、ライオンの下敷きになんか……」
「昨日は、ツイてなかったんだろ。正直のとこ、どうしてああなったのかがアタシもよく分かんねぇし。ブッ倒れて、気が付いたら救急車だったっていう」
 するとユンは、フフッと笑う。自分と同じだ、そうも言った。「なんとなく分かるよ、その気分。病院で目覚めたとき、一瞬だけど自分がどこに居るか分かんなくなって、怖くなるんだ。でも先生の顔を見ると安心する」
「先生っつーと、あの水色の髪のドクターかい?」
「うん、そう。ドクター・ペヴァロッサム。知ってるの?」
「ああ。あんたの見舞いに来た時なんだが、この病院の中で迷っちまってさ。捕まえて、道を訊ねたドクターが、その彼だったんだ」
「……アレクサンダーがここに来てたの?」
「そりゃ、あんたは知らなくて当然さ。結局、アタシはあんたの部屋の場所が分からなくて、その日は会いに行けなかったんだ。ケチな先生は教えてくれなかったんだよ」
「ああ、だから分からなかったんだ。……でも家族以外が来てくれるなんて、初めてで、なんていうか、その、ありがと」
 恥ずかしそうにはにかむユンは、電動の車椅子を操作してアレクサンダーの横に並ぶ。日向に出た彼女の青白い肌は、光で飛ばされ、更に白く見えた。その蒼白い肌を観察しながら、アレクサンダーはユンに言う。
「それにしても、思ってた以上に入院生活ってのは退屈だな。この病院には娯楽みたいなものが何もない。談話室に本や漫画の一冊も無いだなんて、信じられねぇよ」
「だって、そういうのは患者自身が自分で用意するものだから。それに回線は誰でも自由に使えるから、ゲームしたり、調べ物したりできるし。だから患者同士の関わり合いなんて無いんだよ」
「それって淋しくないか?」
「でも、それがここの普通だし」
「マジかぁー。はぁ、母さんに何かしら持ってきてもらえば良かった……」
 横に並んだ二人は、同じ窓から同じ景色を眺めていた。そうしてお互いの顔を見ることなく、雑談を交わす。
 廊下の一角、エレベーター前に設けられた談話室に二人きり。廊下を行きかうような人の気配もなく、真昼間だというのに院内の空気は賑やかさに欠けている。そんな中で顔をつき合せて楽しげにお喋りなど、恥ずかしくて出来るはずもなかった。けれどもそんな程よい距離感が、このときは丁度よかったのだ。
「……それにしても、ライオンの下敷きかぁ。重くなかったの?」
「重いに決まってる。あン時ばっかりは息が出来なくて、死ぬかと思ったさ。顔を引っ掻かれたぐらいの傷で済んだのも奇跡だ」
「でも、どうしてライオンはアレクサンダーに襲いかかったりしたんだろ……」
 そんなことをユンと話しながら、アレクサンダーは意外だと感じていた。
 暗い少女と思っていたユンだが、こうして二人きりで話してみると、そうでもなかったことにアレクサンダーは気付いた。病弱でか細いというイメージはどうしても拭えないが、ユンの性格は好奇心旺盛で明朗快活という印象を受ける。そして同時に、疑問にも思った。こんな明るくて優しそうな子が、何故あんな卑劣な嫌がらせを受けていたのか、と。アレクサンダーには、彼女があそこまで嫌われていた理由が分からなかったのだ。
 きっと、あんな体じゃなければ活発に動き回っていたのだろう。そんなことを想像してしまうと、やりきれない思いがどこからか湧き上がってきてしまう。
「……あー、うーんと、それなんだがー……。別にアタシはライオンに襲われたわけじゃぁねぇんだ。なんつーか、それこそ運が良かったっていうか」
「どういうこと?」
「たしかにアタシはライオンに押し潰された。けどそれは、ライオンがアタシの代わりに銃弾を受けたからなんだ。ライオンが庇ってくれたんだよ、アタシを」
「銃弾?! えーっ、何それ。すごく怖いけど、なんかすごい話だね……」
 大ジャンプで檻を飛び越えて抜け出し、アレクサンダーを押し倒すように飛び掛かって、そして彼女の代わりに銃弾を受けたホワイトライオンのウィキッド。ウィキッドもまた幸運なことに、命に別条はなかったという。弾は脇腹を掠めた程度、軽傷で済んだそうだ。……――ただ、それは現段階でのこと。老齢であることから、ショックで急変するかもしれない可能性があり、その可能性は決して低くはないらしい。
 なお、この情報をアレクサンダ―に教えてくれたのは父親である。それと父親は、市警の科学捜査班に居るという知り合いから聞いた情報も、アレクサンダーに伝えてくれた。
 その情報によると、ウィキッドを撃った――もしくはアレクサンダーを狙って放たれた――銃弾が、二十二口径ロングライフル弾であったらしい。偶然か、それとも必然か、それはニールが昨晩伝えてきた情報と一致していた。
 加えて、父親はこうも言った。捜査は開始されて半日も経たないうちに打ち切られた、と。上層部から圧力が掛かったとのことだが、その異例の速さに市警内部からも疑念を抱く者が出始めているという。
『お得意の隠蔽工作だよ。ライオンを撃った犯人は野放しだ。死人が出るのも時間の問題だろうなぁ、クソッ。娘が危うく死にかけたってのに、警察は何をしてるんだ!』
 父親はそんな悪態を最後に吐き、アレクサンダーの病室を後にした。それが今朝のこと。
 そしてアレクサンダーはやはり、父親に何も打ち明けることは出来なかった。あの電話番号についても、ニールのことについても。
「ねぇ、アレクサンダー」
「んあ?」
「顔色が悪いけど。大丈夫?」
 アレクサンダーと初めて目を合わせたユンは、彼女の顔をまじまじと覗き込んでくる。途端に正体不明の恥ずかしさが込み上げてきたアレクサンダーは彼女から視線を逸らす。それからアレクサンダーは誤魔化すように言った。「大丈夫だ、おう。ちょっと考え事をしてただけさ」
「でもアレクサンダーは頭をぶつけて、脳震盪まで起こしてるんでしょ? だったら一応、先生を呼んだほうが……」
「本当に大丈夫だから。な?」
「でも」
「だから、アタシは大丈夫だから! 本当に、大丈夫。別に医者は必要なっ――」
 そのとき、アレクサンダーが右手首に付けていた腕時計型通話デバイスから、着信音が鳴る。プルルルル、プルルルル。この音は、非通知の着信音だ。
「ちょっと外に出てくる。すまない」
 アレクサンダーはそう言うと談話室を後にし、階段を駆け降りる。と、その最中にも着信音が止まった。通話が切れたのだ。
 一体、何だったのか。アレクサンダーは腕時計を見つめながら、むぅっと眉をひそめる。そうして前方の注意を怠ったときだった。
「……痛ッ!」
 アレクサンダーの肩に、頬の痩せこけた男が前からぶつかってきた。
 相手は脹脛までと丈の長い黒のトレンチコートを纏い、黒の中折れ帽を目深に被って顔を隠し、スクエア型の黒縁眼鏡を掛けた、不精髭を生やした黒ずくめの男だった。身長は、一七五㎝前後というほど。そして体は意外と筋肉質。そんな姿をした男は、アレクサンダーにぶつかってきたものの、何も言わずに去ってしまった。
「おい、ちょっとアンタ! 人にぶつかってきておきながら、無言ってのはどうなんだい!」
 アレクサンダーは男の背中に向かってそう怒鳴るが、相手は気にも留めていないのか、振りかえることもなく、アレクサンダーの視界から消えていく。
「くそっ、昨日からツイてない……」
 アレクサンダーはそんな愚痴を漏らす。そうしてふと、視線を下に落としたときだった。アレクサンダーが着ていた病衣の上着。脇腹のあたりにつけられていたポケットが少しだけ膨らんでいた。
 先程まで、ポケットには何も入っていなかったはずなのに。何かが今は入っている。
「……」
 考えられる可能性と、思い当たる節はひとつだけ。さっきぶつかってきた男が、ポケットに何かを入れたのだ。そうしてアレクサンダーはポケットの中から、黒ずくめの男が送りつけてきたプレゼントを取り出す。
「……なんだ、こりゃ……」
 そこに入っていたのは、手のひらサイズの小さな封筒。それと封筒の外に貼り付けられた、メッセージつきの付箋。封筒には『エリーヌに渡せ』という文字が書かれており、付箋にはアレクサンダー宛てと思われる文章が短く書かれていた。
『今すぐに、親子揃ってこの件から手を引け。そして忘れろ。これ以上の深入りは身の破滅を招くだけだ』
 アレクサンダーは付箋の文章を読み終えると、周囲に注意を移す。そしてあの黒ずくめの男を探したが、姿はもう見当たらなかった。だが代わりに、別の男が見つかった。病院をまた訪ねていた父親である。アレクサンダーは大慌てで父親に駆け寄った。「お、親父! 聞いてくれ!!」
「アレクサンダー、どうした。そんなに慌てて。院内にゴキブリでも出たのか?」
「そうじゃない、これだよ。この封筒!!」
「封筒だと? ――……って、おいおいおい待ってくれよ、アレクサンダー。お前、一体どこでこれを……!?」


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